サプライ・チェインの設計と管理 ―コンセプト・戦略・事例― サポートページ

Designing and Managing the Supply Chain : Concepts, Strategies, and Cases by David Simchi-Levi et al.

久保幹雄 監修 ,伊佐田文彦+佐藤泰現+田熊博志+宮本裕一郎 訳
朝倉書店 2017年

講義用のスライドやExcelなどの関連ファイル1章から4章まではこちらからダウンロードできます.5章以降のPower Pointスライドは以下からダウンロードできますので,講義や社内研修用としてご活用ください.

各章の概要,PowerPointファイル,教師用ガイド

1章:サプライ・チェイン・マネジメントへの招待
ここでは,サプライ・チェインの定義と目的を述べた後,本書全体概要について記述しています.次章以降で述べる用語も未定義で使われていますが,個々の用語の解説をせずに,講義の前に読んできてもらう程度で良いと思います.それによって,サプライ・チェインの実社会での重要性や,クロスドッキング,戦略的提携,マスカスタマイゼイション,顧客価値などのモダンなサプライ・チェインを語るときに頻繁にでてくる用語の耳慣らしをすることができます.

第2章:ロジスティクス・ネットワークの構成 (ロジスティクス工学 第10章 施設配置モデルの資料へ
ここでは,サプライ・チェイン全体を設計するための手法について述べられています.コケコーラの事例を事前に学生に読ませておくと良いでしょう.輸送費用については,米国を例にしているので,我が国の輸送費用の料金体系を補助的に紹介したり,実際に電子地図などを用いて移動時間や移動距離を計算してみるとさらに良いでしょう.

p.35からの例2.4.1は,GeoffrionとVan Royの例です.(常識による計画はあなたの会社の健康にとって有害ですよ!という警告をしている有名な論文からの引用です.) 本書の例の他にもう1つの例題が原論文にはありますが,これらの例は「組合せ最適化短編集」(朝倉書店)久保,松井著の10章「施設配置」でわかりやすく解説されています.(物流部長と美人コンサルタントの対話形式です.)

より本格的なロジスティクス・ネットワーク設計モデルについては,「ロジスティクス工学」(朝倉書店)久保著の第10章の施設配置モデル,第11章ロジスティクス・ネットワーク設計モデルで解説されています.

ロジスティクス・ネットワーク設計のためのソフトウェアには,原著者のSimchi-Leviが作ったLogicTool社のLogiNet,LogiChainや国内ではログ・オプト社MELOS(MEta Logistics Optimization System:メロス)などがあります.

第3章:在庫管理とリスク共同管理 (ロジスティクス工学 第4章 確率的在庫モデルの資料へ
ここでは,経済発注量モデルや確率的在庫モデルなどの在庫理論の基礎の他に,モダンな在庫理論の基礎になるエシェロン在庫や在庫ポジションについても述べています.また,サプライ・チェインを考える上で重要な概念であるリスク共同管理(risk pooling)についての述べています.水着の生産の例では,通常の在庫理論の本のように公式を天下り式に教えるのではなく,Excelなどのスプレッドシートを用いてハンドシミュレーションさせると理解が深まります.

p.64のリード時間が変動する場合の公式は天下り式に書いてありますが,実際に適用する場合には注意が必要です.リード時間が不確実だと,以前注文した品物より,後に注文した品物の方が(モデル上では)早く到着する可能性がでてきます.これは実際にはあり得ないので,リード時間が本書のように正規分布しているという仮定には多少の無理があります.また,国内の多くのテキストでは変な公式が書いてある場合が多いので,それについても注意する必要があります.

第4章:情報の価値 (ロジスティクス工学 第3章 鞭効果の資料へ
ここでは,サプライ・チェインを理解する上で最も重要な概念の1つである鞭効果(bullwhip effect)について書かれています.事例のバリラ・スパはちょっと長いのですが,(A), (B), (C)とも学生に事前に読ませておくと良いでしょう.鞭効果に対する数理モデルの詳細については,「ロジスティクス工学」(朝倉書店)久保著の第3章で解説されています.第2章の経済発注量モデルや第4章の確率的在庫モデルもご参照ください.

また,原著には鞭効果を体験できるビールゲームのソフトウェアがついていました.これは翻訳では省略されていますが,WEB経由で使用できます.また,ネット上のあちこちに無料のものがあります.googleなどの検索エンジンで「beer game」と入れてみてください.

ダウンロード可能なゲーム(システム・ダイナミクスによるシミュレーションシステム)は,こちら

第5章:ロジスティクス戦略 (Power Point 2000 File
ここでは,3つのロジスティクス戦略(クロスドッキング,直送方式,在庫方式)をどのようなケースに使用すべきかについて述べるとともに,在庫転送や押し出し・引っ張りの境界などの比較的新しいサプライ・チェインの概念について解説しています.比較的短いので,実際の企業を例にあげて,どのロジスティクス戦略が妥当かクラスでディスカッションなどをすると良いと思います.

第6章:戦略的提携 (Power Point 2000 File
ここでは,異なる企業がサプライ・チェインの効率的な運用のために提携を行う,いわゆる戦略的提携について述べています.小売りと納入者の提携(Retailer-Supplier Partnership),3PL(Thied Party Logistics),物流業者たちの統合(Distributor Integration),クイックレスポンス戦略,ベンダー管理在庫などの比較的新しいサプライ・チェインの概念についても解説しています.この章も比較的短いので,実際の企業を例として,どのような戦略的提携が成功するのか,それとも失敗するのかをクラスでディスカッションなどをすると良いと思います.

第7章:国際的なサプライ・チェイン・マネジメントの課題  (Power Point 2000 File
ここでは,グローバルなサプライ・チェインの難しさや注意点について述べています.ウォルマートの事例を事前に学生に読んでこさせると良いと思います.また,日本の企業が東南アジアに生産拠点を移していることについても,諸企業の事例をふまえてディスカッションすると良いと思います.本書では詳細についてはふれていませんが,関税や関税控除,為替,移転価格税制や国による法人税の違いなどについても補助的な資料を示す(もしくは自分で調べさせる)と良いと思います.

第8章:製品設計とサプライ・チェイン設計の統合  (Power Point 2000 File
ここでは,「ロジスティクスのための設計(Design for Logistics)」の概念についてヒューレット・パッカードの事例を通して解説しています.ヒューレット・パッカード社の事例も事前に学生に読ませておくと良いでしょう.これは,旧来の「製造のための設計(Design for Manufacturing)」の概念を拡張したもので,ここで解説する遅延差別化(delayed differentiation),納入業者統合(Supplier Integration),マスカスタマイゼーションとともにモダンなサプライ・チェイン・マネジメントの理解のためのキーワードになっています.

第9章:顧客価値とサプライ・チェイン・マネジメント  (Power Point 2000 File
ここでは,デルの事例をもとに顧客価値の創造と評価方法について解説しています.p.241 のアマゾン・コムの例などでは,書籍や音楽CDの直販業者であるアマゾンが(ベストセラー以外は)無在庫で顧客サービスを行っていることをあげていますが,最近では倉庫にある程度の在庫をもつ戦略に転換しています.このような時代の流れによる戦略の変化を例にして,抽象論になりがちな「顧客価値」についてディスカッションすると良いと思います.

第10章:サプライ・チェイン・マネジメントのための情報技術  (Power Point 2000 File
ここでは,スターバックスの事例をもとに情報システムを導入する際の注意について解説しています.特に,企業体資源計画(Enterprise Resource Planning: ERP)ソフトウェアなどの統合システムを導入するか,種々のソフトウェアを組み合わせた「いいとこどり」のシステムの構築するかについて,例をあげて解説しています.また,サプライ・チェインにおける情報技術の開発のレベルや,企業体資源計画システムと意思決定支援システムとの関係についても,具体的なソフトウェアベンダーを例として解説しています.

第11章:サプライ・チェイン・マネジメントのための意思決定支援システム (Power Point 2000 File
ここでは,サプライ・チェイン・マネジメントの中核を成す意思決定支援ためのソフトウェアについて解説しています.我が国でも多くの企業がサプライ・チェイン・マネジメントのための意思決定支援システムを開発しています.それらの企業を自分で調べて,クラス内でディスカッションするとおもしろいと思います.

また,サプライ・チェイン・マネジメントでは地理情報システムが必要になる場合が多くあります.p.316あたりで米国の地図についての記述がありますが,我が国では米国より詳細な地図が(米国のように政府が提供しているので無料ではなく,有料になりますが)数多く提供されています.本文では,道路網を考慮した最短時間(距離,費用)の経路を計算することは非常に時間がかかると記述されていますが,我が国の場合には高速に計算できるエンジンも比較的安価に入手可能です.例として,ライナ・ロジクス社の提供しているナビ・マトリックスを紹介しておきます.

誤植等

第一刷の誤植

  1. p.5 脚注 在庫回転率:製品の総通過量が,倉庫の容量に対して何倍であるかを表す指数....-> 訳者注:在庫回転率とは,製品の通過量が,平均在庫量に対して何倍であるかを表す指数.たとえば,平均在庫量が100個である倉庫から搬出される製品の量が,年間で500個の場合,年間の在庫回転率は 5 である(p.31参照).

  2. p.17 脚注内 *2) 訳注 ->訳者注

  3. p.18 下から4行目:製品在庫単位->製品在庫単位 (Stock Keeping Unit: SKU)

  4. p.20 下から13行目:最終製品,から->最終製品から

  5. p.38 14行目:「整数計画モデルである.」に脚注(訳者注)として「正確には,混合整数計画モデルとよばれ,整数変数と実数変数の混在した計画モデルになる.」を追加

  6. p.50 17行目: サイクル時間Tにおける総在庫費用は->サイクル時間Tにおける総費用は (原著ミス)

  7. p.50 下から5行目: 単位時間あたりの平均在庫費用になり->単位時間あたりの平均費用になり

  8. p.54 20行目の計算式: 125×8,000+20,000-80,000-100,000 ->125×8,000+20×2,000-80×10,000-100,000

  9. p.56 図5.5 の軸名:費用->利益(原著のミス)

  10. p.57 下から10行目:下記のとおりである.->下記のとおりである.(訳注:図からは$200,000より大きめの値が読みとれるが,おおよその値を読みとっていると推測される.)

  11. p.58 8行目:かつ追加生産をする場合の...->かつ追加生産をまったくしない場合の...

  12. p.59 下から6行目:秋葉原無線が,要求される->要求される

  13. p.60 3行目:リード日数->リード時間

  14. p.60 6行目:「在庫配置」という用語を用いているが,「在庫ポジション」と訳語も用いられる.以下同様にp.60 12行目,13行目,p.63 図 3.7中,p.70の下から1,3,4,6,7,8,13行目,p.72の8行目も修正する.これは,inventory deployment も在庫配置(p.320)と訳しているためである.

  15. p.61 1行目:Prob を Prob とローマン体のフォントにする.

  16. p.61 下から3行目:週ごとの発注点(この場合には補充目標量でもある)->補充目標量が何週間分の在庫に相当するか

  17. p.62 表3.4中:発注点(補充目標点)->補充目標点

  18. p.62 下から5行目:STD -> z ×STD

  19. p.66 2行目:表3.5および3.6は->表3.5および表3.6は

  20. p.82 図4.2中のマカロニ社(2ヶ所)をバリラ社に変更

  21. p.87 に脚注追加:訳者注:図注の単位のキンタル(quintals)は,米国では100ポンド,英国では112ポンドを表す重量の単位である.

  22. p.99 下から3行目:期 I の顧客需要を -> 期 i の顧客需要を

  23. p.118 1-4行目:一般的には,...考えがちである.-> 通常の在庫生産方式(make to stock system:注文生産でない方式)では,顧客の需要はできるだけ小売店にある在庫で満たすことを想定している.

  24. p.102 11行目: Σi=1k-1 Li ->  Σi=1L(2ヶ所)(原著ミス)

  25. p.102 下から8行目:Σi=1k-1 Li ->  Σi=1Li  (原著ミス)

  26. p.103 下から14行目:Πi=1k-1  ->  Πi=1  (原著ミス)

  27. p.104 図4.8の図中: K= -> k= (5ヶ所)

  28. p.124 下から11行目:遅延差別化は,第8章で詳しく説明する,->第8章で詳しく説明する遅延差別化は,

  29. p.136 下から9行目:倉庫における規模の経済性:の最後の:(コロン)をとる.

  30. p.149 4行目: GATXに->(3PL業者の)GATXに

  31. p.155 下から6行目:小売業者による->小売業者が

  32. p.158 例 6.4.3 内の3行目:Aceは -> エースは

  33. p,186 下から8行目:特定地域向け製品: の 最後の:(コロン)をとる.

  34. p.194 4行目:中国のでは->中国では

  35. p.204 3行目:OFRも->受注充足率も

  36. p.204 17行目:シュリンク包装して->まとめて包装して

  37. p.208 下から3行目:Gloval ->Global

  38. p.209 10行目,下から8行目,p.217 下から9行目,p.218 12行目,p.219 9行目 DFL ->「ロジスティクスのための設計」に変更

  39. p.223 1行目:需要よりも小さくなる->需要の標準偏差よりも小さくなる

  40. p.225 5行目:The Global Procurement and Supply Chain Benchmarking Initiative -> 「グローバル調達とサプライ・チェインのためのベンチマーキングイニシアティブ」

  41. p.249 下から3行目:SCOP->SCOR

  42. p.250 下から4-5行目:デルは,在庫回転数を...計算していない.デルは在庫のスピードを評価尺度として用いているが,通常の在庫運用成績の評価尺度である在庫回転率は用いていない.

  43. p.250 表9.1の表題:SCOR ->サプライ・チェイン運用参照

  44. p.257 11行目,19行目:SKU ->在庫保管単位

  45. p.257 下から8行目,10行目(2ヶ所):BOM ->部品展開表

  46. p.263 5行目: CIO -> CIO (Chief Information Officer:情報部最高責任者)

  47. p.273 10行目:www.rosettanet.com ->www.rosettanet.org (原著ミス)

  48. p.279 1行目:WAN -> WAN (Wide Area Network:広域ネットワーク)

  49. p.281 下から11行目:VAN -> VAN (Value Added Network:付加価値通信ネットワーク)

  50. p.282 下から7行目:もたらす... ->もたらす.

  51. p.283 2行目:もたらす... ->もたらす.

  52. p.283 表10.2 中の4行目: SDI ->電子データ交換(Electric Data Interchange: EDI)

  53. p.292 下から3行目:販売時点-> POS

  54. p.293 下から7行目:SDI ->電子データ交換(Electric Data Interchange: EDI)

  55. p.299 下から2行目:製造資源計画->資材所要量計画

  56. p.300 9行目:MRP-IIシステム->MRP-II (製造資源計画)システム

  57. p.306 下から8行目:正確であること確認する->正確であることを確認する

  58. p.306 下から6行目:第3章2.3節 -> 第2章 の2.3節

  59. p.309 1行目:高度に統計的なツール->高度な統計的ツール

  60. p.312 8行目:最低合計走行距離->最小総走行距離

  61. p.318 6行目:もしあったら(what-if) 分析->もしこうなったら(what-if)分析

  62. p.319 下から13行目:文献 52)  -> 文献 20)

  63. p.320 3行目:250百万ドル->2億5000万ドル

  64. p.325 脚注: ここでいう入札とは->訳者注:ここでいう入札とは

  65. p.326 5行目:もしあったら(what-if) 分析->もしこうなったら(what-if)分析

  66. p.326 7行目:アニーリングによって -> アニーリング法によって

  67. p.330 下から9行目: DRP および MRP -> 物流資源計画および資材所要量計画

  68. p.330 下から3行目:CPFRは->CPFR(p.286参照)は

  69. p.347 索引左列1行目,p.378 索引左列15行目:在庫配置(定義)->在庫ポジション(定義)

    第二刷の誤植

  70. p.46 15行目: 企業が大きな顧客需要の大きな変動を->企業が顧客需要の大きな変動を

  71. p.60 6行目:「在庫配置」->「在庫ポジション」(第1版の修正が不完全)

  72. p.61 下から7行目:週別需要の標準偏差=月別需要の平均値->週別需要の標準偏差=月別需要の標準偏差

  73. p.76 下から9行目:125万平方キロ->125万平方メートル

    第三刷の誤植

  74. p. 116: 例4.3.1の最後に参考文献 [111] を入れる.

  75. p.124 下から11行目: ロジスティクス設計概念の1つ ->「ロジスティクスのための設計」(design for logistics)の概念の1つ

    第四刷の誤植

  76. p.121 16行目: 継続的な改善活動(Constant Work In Progress: CONWIP ->総仕掛品一定方式(Constant Work-In-Process)

  77. p.343 索引 右段 下から5行目:継続的な改善活動(CONWIP)->総仕掛品一定方式(Constant Work-In-Process: CONWIP) としてサ行に移動

  78. p.368 索引 右段15行目:CONWIP(継続的な改善活動)->CONWIP (総仕掛品一定方式)

    第五刷の誤植

  79. 149ページの中央、「石油会社2社は・・・」で始まる文の「5から13に減らす」-> 「13から5に減らす」